ナイトマーケットの活気に包まれたホーチミンの夜。僕はお店のテラス席でビールを楽しみながら、行き交う人々を眺めていました。
通りを歩くのはほとんどがバックパッカーや旅行者たち、そして客引きや物売りたちです。
しかし、時折、地元の人々が家路を急ぐ姿も見かけます。
その中に、親子三人でバイクに乗った家族の姿がありました。
さりげない幸せの瞬間
20代後半くらいの若い夫婦と、5歳くらいの可愛らしい女の子。お父さんが真ん中で運転し、女の子はお父さんの前に座り、お母さんは後ろにしっかりと腰かけていました。
ベトナムでは当たり前の光景かもしれません。
しかしその瞬間、僕は「幸せってこういうことなのかも」と感じずにはいられませんでした。
変わりゆくホーチミンの未来
現在、ベトナムはバイク利用率が約73%と東南アジアで最も高い国です。しかし、GDPの成長率は約6%と高水準で、今後はバイクではなく自動車を所有する家庭が増え、公共交通機関も発展していくことでしょう。
2040年代にはGDPで日本を追い抜く可能性があるとさえ言われています。
まさにあの少女が大人になる頃です。
ふと思い出すあの夜の記憶
その頃ホーチミンでは、家族でバイクに三人乗りする光景は当たり前ではなくなっているかもしれません。
きっとあの女の子は立派な大人になり、大都市に成長したホーチミンで充実した日々を送っている。
しかしふと、10数年前のあの夜を思い出す。家族三人で一台のバイクに跨って家路についていたあのかけがえのない日々を。
あの懐かしい日々を。
大都市になったホーチミンではもう見られなくなったあの光景を。
立ち会えた幸せ
そんな誰かにとっての大切な瞬間にリアルタイムで立ち会えたことに、僕はとても幸せな気持ちになりました。
ナイトマーケットの喧騒の中、変わりゆくホーチミンの未来を想像しながら、僕はその瞬間の幸せを噛み締めたのです。
あの親子が過ごす一瞬一瞬が、彼らの心にいつまでも残るように、僕の心にも深く刻まれました。
ホーチミンのナイトマーケットで見かけたささやかな幸せの瞬間は、変わりゆく街の中でひときわ輝いて見えました。
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